『幽閉者』サウンドトラック・スペシャル・ユニット@芸大北千住

今日は仕事の合い間に無理やり時間をつくって芸大にてライブを見る
やったぜ、自営業最高!
面白かったので印象が薄れないうちに書いておきたい


今秋公開の足立正生監督の映画『幽閉者』のサウンドトラック制作ユニットによるライブパフォーマンス!

『幽閉者』サウンドトラック・スペシャル・ユニット:大友良英(g, turntables)/ジム・オルーク(g, electronics)/秋山徹次(g)/飴屋法水(物音)/Sachiko M (sine waves)
http://www.geidai.ac.jp/labs/mce/


正直に言うと足立正生監督の監督作は全く見たことが無くて
なんとなく昔、亀有名画座でもらった本にでてきたような・・・
たしかピンクの人だったなぁ・・・程度の知識で出向いたのだが
ライブ前に大友氏と足立監督、あと芸大の先生を司会に30分くらいトークショーがあって
この監督、詳細ははてなのリンクやwikiで見ればわかると思うので書かないけれど
あぁ!そういえば聞いたことあるな、と
どえらいイベントに意図せず来てしまったぞ、とドキドキしながら固唾をのんでお話を拝聴
ただ、内容的には政治的な話はほとんどない
司会が音響関係の芸大の先生なので、実験音楽とは?云々の話がメインになるのだけれど
大友良英ってどんな人?フリージャズの人・・・よしフリーってつくからOK!」
そんな経緯でサントラを依頼した・・・のように、なんというか軽妙な会話を楽しむ印象
イベントの性質上実験的な音楽とは?のような入り組んだところに話が入ていくんだけれど
時間をかけて考えないと出てこないような答えがポンポン返って来る
格好をつける感じは全くしないけれど、非常にスマートでカッコ良い人物だった
(監督はフリーズドライされて現代に戻ってきた浦島太郎みたいな人-普通のベテランみたいに保守化してない人-なんて話もあった・・・中東の独房が竜宮城か・・・会場では和気あいあいと皆笑ってたけど、今になって考えると凄い話だなぁ・・・)


映画に関してはブランキという革命家の晩年の本(ブランキ本人が書いたのではないとも言われるそうな本人の世界観をとらえなおした本らしい・・・この辺は自分は詳しくないので良くわからない・・・微妙に間違ってそうで申し訳ないのだが、自分が後で映画を見たときにこんな事言ってたなというのを忘れてると嫌なので書く・・・)
に着想を得て、自分が関わっていた赤軍兵士が中東で幽閉されていた時分に置き換えて撮ったものだそうだ
実際に幽閉されていた人なので、拘留時に渇望する自由ってどんなもんか・・・むしろ開放されたあとのほうが・・・究極的にはみんな自分達の頭蓋骨に幽閉されているようなものなわけで・・・今の若い人の方がある時はかつての敵と手をとったりすらもできないような辛い状況にいて・・・などとの話も


トークの終盤では大友氏の、今は何でも検索できて再発もドンドン手に入る時代でそんな中、とにかく今までにやった事ないことをやるのが実験的ということなのか?のようにメインのライブに期待を持たせてくれる話があったりして、全体的に締まった良いトークが聞けたと思う




そんな流れで、メインのライブ
これもジム・オルークの比較的ロックよりなCDは繰り返し聴いていたけれど
飴屋法水(物音)/Sachiko M (sine waves)
 物音?-sine waves奏者!?予習的な知識が全然ないまま会場にきたので
久しぶりにハラハラしながら演奏を待つ
イントロがジム・オルークのギター、多分映画のなかで唯一監督に要求されたという林檎をモチーフにした牧歌的メロディーで始まる
少しすると不意打ちのように金属音が、ガッ!と挿入されたりして次第にドローンのような展開
自分は仕事から帰るとフェルナンデスのギターを鳴らしてラモーンズの電撃バップを練習したりしているようなアホなおっさんなので
いきなり不慣れな空間に投げ込まれた感じ
演奏の前半ではスクリーンに主演の田口トモロヲが中東で拷問されているシーンが映っている
sine wavesの演奏は、鬼の形相で耳をつんざくような音を連発する(ボアダムスのノイズラモーンズって曲のようなキーンとした音の)ものだと思ってたら、なんというか、シュッとしたクールなお姉さんが思いのほか落ち着いて全体の空気を探るような形で音をだしていた
物音は、手に小銭をいっぱい掴んで湯のみに少しづつ落としたり、林檎を塔のように5個くらい積み重ねたり(練習したのか妙に上手い)子供がボサーっと食卓で暇をつぶすときの行動をずっとしているようなプレイ
演奏のバックでは虫だか鳥だかの声が終始なっていてるので、多分獄中の映画だから幽閉者の頭の中にある記憶の音のようなものを全面的に押しているのかもしれないけれど、それも獄中生活が主題ゆえ、たっぷり時間をもって聴かせる
特定の環境下にある人の脳味噌のなかを再現するような演奏、そういう方法で音楽をつくれるとしたら
何というか上手く言えないが、その方法は凄く面白い音楽をつくるヒントになるような気がする
少なくとも自分が本を読んだり、ネットで文章を探したりするのも人の頭の中をのぞきたいという意識は間違いなくあるわけで、音楽だってその例から漏れるということはないだろう
ちょっと楽器を触って、俺もジミヘンみたいに親指使ってFコード押さえてぇ!とか、2ステップみたいなリズムのためはシャッフルの設定を・・・ギターに燃やしながら弾くといい音鳴るかなぁ・・・なんて考え出すとどんどんそういう要素から離れてしまうわけで
トークであった今までにやった事ないことをやるのが実験か?ということを、ガッチリ実践してくれていたように思う
自分はライブで見られて幸運だった
あと、白いSGを鳴らしていたギターのお兄さんが不意に日本刀をとりだしていた
ビジュアル面も退屈なものではなかった、というか独特のエキサイティングな経験だったと思う
ただ、音自体は日本に来ていた頃のコルトレーンが真っ赤な顔で吹きまくるフリージャズというよりは、
学生の頃NHKFMプログレ特集で聴いた鐘の音がチリーンのような、ジャーマンプログレのようなイメージ
不協和音、物音の多様で引っ張る時間が多かったと思うが、その中で規則的なリズムや和音、轟音が鳴り出すとグーっと高揚してくる
自分は普段聴く音楽がキャッチーなロックやテクノ主体なせいか
リズム主体の音楽でなくてもどうしても体の揺らせどころをつくっていく癖があって
今日の演奏は車や電車に乗っていてそんな感じでリズムに体を合わせていると、乗り物のスピードが変化して
ノイズのリズムと体のゆれにズレが出てきて独特な気持ちよさが生まれる時に近いように感じがあった
あとは音自体が、例えば小さな陶製の小皿をすり合わせてコワン、コワンと固い音なのにワウに近い効果を出していたり普段CDフォーマットにのらないものでも電子音楽好きにも楽しめる音が多く、個人的に面白かった


自分もおっさんになったせいか、どうしてもライブなんかは昔から知っている音楽ばかりに足が向きがちになってしまうが
北千住は通っていた高校もあるし、ウチもちかいので是非今日みたいなイベントをガンガン開いて欲しい
終了後、会場でDVカメラを回していた学生に足立区民枠で来たと思われるばぁちゃんが
「芸術だねぇ〜」などといって話しかけていたのが妙に鮮烈だった
あのばぁちゃん、区の広報等からイベントがあると足繁く通ったりするのかもしれないけれど
芸大のイベントが頻繁に行われれば、じき、音楽に目覚めて
5年後くらいにスペインのソナーあたりのイベントで仏壇奏者として出演をするかもしれない
北千住系だ
北千住系!


写真は芸大となりの北千住警察
あのカエルは5年後に北千住系のシンボルになります
いかん、妙なテンションで夜更かししてしまった・・・